家紋について
家紋は字の如く「家の紋」です。習慣やしきたりの変化とともに現在では冠婚葬祭など以外では目にしなくなりました。 しかし、企業のロゴや看板・暖簾など家紋をモチーフとした意匠デザインは数多くあります。 家紋以外にも神社仏閣では「神紋」や「寺紋」、「巴」などの紋が刻まれています。 和柄とともに優れたデザイン性と歴史を持つ「家紋」を再認識しながら、その美しさを再発見していきましょう。 ここでは、平安時代から現在までの「家紋の歴史」、 日本の紋章全般から家紋の位置する「紋章の分類」、 本家から分家に家紋を継ぐ時にバリーエション展開する「紋章の変化」させる手法 などをまとめてみます。
紋章・家紋の歴史
家紋の起源には諸説あるようですが、 一般的には、文様 → 紋章 → 家紋 のように考えられています。
平安時代
藤原実季御所車(牛車)に「巴」を表記したのが始まりとされ、 公家のあいだに装飾として広まったとされています。
戦国時代
戦国時代の室町時代に、武家が紋を持つようになったようです。 その武家紋は、鎌倉時代の源平合戦で紅白旗から始まったといわれています。 敵味方を判別する旗印に使用するためシンプルなデザインが多いようです。 「馬印」「陣旗紋」「陣幕紋」などがあります。 安土桃山時代の千利休による茶道具紋などもあります。
江戸時代
屋号として商家が使用するようになり、大相撲力士や落語家、 歌舞伎役者などが手拭などに自身の紋を入れるようになる。 江戸庶民のあいだにもお洒落感覚として普及した。
明治時代以降
「平民苗字必称義務令(明治8年／1875年)」により国民全てが苗字を持つようになり、家紋が増えることとなる。 西洋文化のタキシードが入ってきたのに対して、紋付袴(黒紋付)が普及した要因もある。
紋章の分類
紋章として分類する。
家紋
紋を複数持つ家では定紋(本紋・表紋・正紋)と替紋(裏紋・別紋・控紋)とある。
屋号
商用で用いるためのロゴなど。
寺社紋
寺紋・神紋など寺院・神社が用いる紋。
役者紋
歌舞伎・落語などの芸能に用いる紋。
沖縄紋・アイヌ紋
沖縄の屋判(ヤーバン)・アイヌ紋章など。
女紋
女性だけが使用する紋。嫁ぐ際に定紋をアレンジしたり、替紋の代用など。
通紋
定紋の代わりに誰でも使用できる紋。貸衣装などで使われる。
独占紋
個紋・私紋・洒落紋など特定の家や個人が使用する紋。紋名に「家」が含まれる。
紋章の変化
家紋は原則的には同じ名字のものが同じ家紋を用いるのが本義であると思われるが、 子孫が増え本家・分家と分かれ更に分家の分家が分派し、本家・分家を区別する必要が生じたことにより、 本家の原型を残し外枠を追加・分割、描かれているモチーフを改変するなどしてバリエーションが生まれた。 江戸時代には紋師(紋章上絵師)よる華やいだ家紋がつくられるようになり、 定紋とは別にお洒落を楽しむための洒落紋(遊び紋)なども流行る。 定紋の周りに友禅をあしらった加賀紋や、大きな刺繍を施した伊達紋、彩色紋などがある。 時代とともに変化するが原型の判別が出来なければならないため、 手法は以下のように限られている。
本家・分家など区別する例として、薩摩藩種の島津氏の家紋は簡単な「丸に十文字」だが、 支流が増えるに従って60余種のバリエーションがある。
参照： kamon-art
外枠「輪」を付加
紋章の周囲を下記の輪で囲みアレンジする。
毛輪 もうわ・けわ糸輪 いとわ
細輪 ほそわ
中輪 ちゅうわ・なかわ
丸輪 まるわ
中太輪 ちゅうふとわ
太輪 ふとわ
二重輪 にじゅうわ
三重輪 さんじゅうわ
陰丸輪 かげまるわ
子持ち輪 こもちわ
石持ち こくもち
菊輪 きくわ
八重菊輪 やえぎくわ
梅輪 うめわ
八重梅輪 やえうめわ
地抜き朧梅輪 じぬきおぼろうめわ
光琳梅輪・朧梅輪 こうりんうめわ・おぼろうめわ
朧輪 おぼろわ
藤輪 ふじわ
片藤輪 かたふじわ
軸付き藤輪 じくつきふじわ
雪輪 ゆきわ
外雪輪 そとゆきわ
雪輪菱 ゆきわびし
月輪 つきわ
雪月輪 ゆきつきわ
瓜輪 うりわ
源氏輪 げんじわ
細源氏輪 ほそげんじわ
三つ源氏輪 みつげんじわ
六つ源氏輪 むつげんじわ
唐草輪 からくさわ
変わり唐草輪 かわりからくさわ
雁木輪 がんぎわ
細雁木輪 ほそがんぎわ
鐶輪 かんわ
洲浜輪 すはまわ
竹輪 たけわ
柊輪（１） ひいらぎわ
柊輪（２） ひいらぎわ
薄輪 すすきわ
輪貫き わぬき
浪輪 なみわ
八つ浪輪 やつなみわ
外枠「角」を付加
紋章の周囲を下記の角で囲みアレンジする。
平角 ひらかく平角 ひらかく
太平角 ふとひらかく
隅立て角 すみたてかく
隅立て角 すみたてかく
垂れ角 たれかく
隅切り角 すみきりかく
隅切り角 すみきりかく
陰隅切り角 かげすみきりかく
隅切り鉄砲角 すみきりてっぽうかく
隅切り反り角 すみきりそりかく
隅入り角 すみいりかく
隅入り角 すみいりかく
隅入り平角 すみいりひらかく
隅入り蔓角 すみいりつるかく
折り入り角 おりいりかく
撫で角 なでかく
子持ち隅切り角 こもちすみきりかく
子持ち隅入り角 こもちすみいりかく
子持ち八角 こもちはっかく
雁木角 がんぎかく
組み合い角 くみあいかく
太夫角 たゆうかく
鉄砲角 てっぽうかく
隅切り平角 すみきりひらかく
平隅切り角 ひらすみきりかく
内隅切り平角 うちすみきりひらかく
内隅入り平角 うちすみいりひらかく
変わり地抜き撫で角 かわりじぬきなでかく
六角（１） ろっかく
六角（２） ろっかく
八角 はっかく
子持ち八角 こもちはっかく
石持ち隅立て角 こくもちすみたてかく
原型の面影は残す
陰陽…面で表す(日向紋)・線で表す(陰紋)など。
表裏…草花のモチーフなど通常は表面を描くところ、花弁など裏から描く。
単数…単弁で描く花弁などを複弁で描く。
上下…モチーフの上下を入れ替える。
鋭鈍(鬼)…丸みのあるモチーフを鋭く尖らせて描く。
画風…絵描きの画風を模して描く。
真向き…モチーフを真正面から描く。
向かう…植物を正面から描く
横見…植物を横から描く
覗き…紋章の一部が下から現れて描かれる。
隅立て…□を◇と描く。
平…方形を□に配置し描く。
折るモチーフを斜めに折って描く。…
捻る…花弁などを螺旋状に捻って描く。
結び…紐のように結んで描く。
擬態…花弁などを蝶・巴などのように描く。
原型を複数に増やす
対い…同一のものを回転させ左右に配置する。
上下対い…同一のものを回転させ上下に配置する。
寄せ…同一のものを中心に寄せる。
頭合わせ(上部)と尻合わせ(下部)がある。
並び…同一のものを複数並べる。
違い…同一のものを中央で交差させる。通常、左のものを上に配置。
抱合せ…同一のものを抱き合わせる。
重ね…一部を重ね合わせる。
盛り…同一の三点を品文字型に配置する。
離れ…上記の「寄せ」の反対。
追い…同一三点のモチーフの頭部と尻部をつなげて円形に配置する。
持ち合い…デザインの一部を複数のモチーフで共有させる。
繋ぎ…同一のものを複数連結させる。
組み…モチーフの部分を互い違いに組み合わせる。
子持ち…大きな形状で同一の小さい形状を包み込む。
入れ子…菱・枡などを入れ子にする。
その他
合成…異なる紋章を組み合わせる。
比翼紋…異なる紋章を重ねたり並べる。
割…紋章を分割する。
省略…一部を省略する。